誰が組織を崩壊させていくのか
一社員として、明らかに経験がない新入社員や中堅社員、成績や素行が不良な社員は、誰が見ても組織内の弱点部分であることから、全員が同じ認識で助け合ったり、改善に動いたりすることができます。
通常、社員同士では、助け合いや改善に向けての活動を起こすのですが、組織を崩壊させる社員は、実は「優秀な社員」と「企業文化」なのです。
優秀な社員の問題
適切なピープルマネジメントが存在しない場合、自分が優秀であることを誇示したくて仕方ない人間が、人と組織を破壊していきます。部下や他者を、承認欲求を満たす道具として扱っているのです。
「自分がいないとダメだな~」「君に不足している点はこの点で~。だからこうやった方がいいんだよ~。こっちが良くない?~」「部下に指示・指導している自分カッコイイ!」
これらの行動は、「優秀だけど嫌な奴」と認識されます。
経営陣やマネージャー陣が「優秀だけど嫌な奴」として振る舞うと、組織の水槽がどんどん濁っていきます。
「優秀だけど嫌な奴」は、他の人から立派な人・すごい人と思われたくて仕方ありません。その上、自身の行動が善か悪かには興味がなく、他人をだましたり、操ってでも自分の目的を達成しようとします。勝者が正義だという思いがあります。
企業文化の問題
「優秀な社員」や「経営陣・マネージャー」が過去に築き上げてきた栄光や、生存者としてのバイアス(思い込み・いままでこうやってきた・こうあるべきだ)に基づく「企業文化」も、組織崩壊の原因となり得ます。
企業文化とは
リーダーたちの言語、すべての行いが、組織全体になじみ形成された文化のことを言います。
過去やってきたことが、成功の絶対条件だと信じ、その行いを下に下に落としていく。
大多数の思想と行動が企業文化となるので、い良いものも悪いものもどんどんと、下に落とされていきます。
企業文化の悪い例え
遅刻問題を例にとります。会議や社内打合せでありがちなシチュエーションです。
社長が遅刻する。でも専務は遅刻しない。
専務は遅刻するけど、部長は遅刻しない。
部長は遅刻するけど、課長は遅刻しない。
このように、「部下に合うときにゆるくなる上司」がいる企業は悪い文化を持っているといえます。
部下は受け入れてくれるのがあたりまえだろ!といった空気感。
これが悪い企業文化です。
この悪い企業文化が組織全体につながり、組織崩壊のきっかけとなっていきます。
組織が崩壊するポイント
「優秀な社員」や「企業文化」による組織崩壊のポイントを挙げます。
以下のような状況があると、崩壊に近づいていきます。
嘘をつく、だます、しれっとする
報告で、やっていないのに「やっています」とか、お客様からの問いに分かったふりをする。いわゆる不誠実な対応・態度。
批判する、文句、責める
攻撃をしていること。対立。単純に、攻撃的な言葉を発することで、対立構造を生み出していきます。
条件付き発想
「〇〇してくれたらしますよ」など、交渉駆け引きは、実は受け身姿勢の表れです。交換条件を出すことです。相手の出方で自分の対応を変えるのは、信念がない・無責任と言えます。これが蔓延すると誰も責任を取らなくなります。
逃避
やらない言い訳を述べ続けること。
遅刻、無断欠勤
相手のことを考えていない姿勢の表れ。仕事では、何事でも相手がいることなので、基本的なことを行わないのでは、信頼は築けません。
自己中
自分だけ、自分のチームだけ良ければいい態度。仮に成績や状況が良い場合でも、再現性や理論の上に立った合理的な説明を行わなければ、対立構造ができます。環境や、自分たちが見えない第三者の助けのもとに自分たちが成功できている、ということを意識していないような姿勢は、他の人たちからは、ただの自慢であったり嫌味にしか映りません。
短絡的
数字が出ていればいいやん。これは、短絡的な発想。経営者でない限り、これでいいという判断を自分自身で発表することは、自己中であることと変わりません。
睡眠・栄養・運動不足
基本ができない状態。人間の摂理として機能しない上、対価に応じた労働を、正しく払うことができません。出会って数秒で印象が決まる、とか、見た目で人の印象の大部分は決まる、など、多くの研究がある中でも、配慮が必要な部分です。
社長独裁
社員が言いなりとなり、自ら考えなくなる。顧客や、物事の本質に目を向けなくなります。
なぞる
マニュアル通り。それ以上は何もしない。自分仕事以外に興味はない。
世の中の状況や、改善進化ができなくなります。
組織崩壊の対策
組織崩壊をまねく状況の場合、上記の10項目が正義・ものさし、となってしまいます。そうなると、以後入社してくる社員や、今いる社員にとって、「こういう企業文化の組織なんだ」とか、「自分さえよければいい」というような対立構造を生み出し、正しい成長と発展を遂げられません。組織崩壊へのカウントダウンがはじまります。
対策としては、なぜこれらのボヤが発生してくるのかを、一つ一つ解決していくしかありません。例えば社長が不機嫌だったとき、空気が悪くなる状況であれば、その点、「不機嫌を表に出さない」ということになります。小さなことの積み重ねではありますが、一人一人が意識しているかしていないかが、今後の組織運営の方向を決めます。組織崩壊に気が付いたときは、どうしようもないことがほとんどです。
このような違和感の日々に対して、「おかしいよね」と思っている人はたくさんいると思います。しかし、「優秀で嫌な奴」は、優秀で、言葉も巧みです。相手が優秀であるがゆえに、言えない空気もあります。不穏な空気感は「企業文化」を不健康な状態としていきます。
失敗する組織崩壊対策
悪い企業文化が蔓延し、組織が濁ってくると経営陣は対策を打とうと行動します。
社長・専務・部長など、経営層マネジメント層が集まり会議を行います。
「組織改革だ」「罰則だ・罰金だ」「研修だ」と。よくある現象です。
しかし、前向きな効力は発揮しません。
なぜなら、原因となる「行動」にフォーカスできておらず、その原因となる「行動」を改善していないからです。
真の解決・改善策
一人一人が、上に挙げた10ヶ条の逆を行なっていくこと。
全社員が、この項目を理解し、相互に気を配り、注意しあっていく風土をつくること。
権力も権威もある、経営者・マネージャー層が、自身の行動を徹底すること。
この2点です。
そもそも、部下に指示する割には、自分ができていないような管理者たちでは、1ミリも社員に思いは伝わりません。
優秀な社員という権威のポジション・上司という権力のポジションを都合よく使っていませんか?という感覚です。
真の解決・改善策とは、「身をもって」社長だけではなく、人事担当者だけではなく、社員全員で取り組むことなのです。